映画プロムナード

 20歳ころ、いい映画は全部見てみようと、なぜか思い立った。
まずは歴史劇の天地創造、ローマ帝国の崩壊、十戒、ベンハーなどから始めて、洋画をけっこう見てきた。政治家の仕事になって映画館に行けるのは、年に2,3回。でも、いDVDという便利なツールがあらわれた。55才になっても相変わらず映画大好き人間でいる。パソコンで車や新幹線移動中も見るが、本当に時間のたつのを忘れてしまう。

映画は、最高にすばらしい総合モダンアートだ。

好きなジャンルは今も歴史スペクタクルもの、でもかなり個性的なので別の部屋に移している。フィーリングがあうようでしたら、どうぞクリックしてください
歴史スペクタクル
ゴルゴダへの道


ペーパームーン
1973年作のアメリカ映画。恐慌時代の流行歌It's only paper moon.からタイトル名が採用される。監督の友人オーソンウエルズから、題名だけで売れるといわれた監督の制作秘話も収録されている。ペーパームーンの主演はライアンオニール扮する詐欺師。父親を知らず、バーで働く母も亡くし、タバコを吸う9歳の孤児を娘のテイタムオニールが見事に演じ、アカデミー賞助演女優賞を受賞した。大恐慌時代、1935年のカンザスが舞台。あえてモノクロで時代の雰囲気をかもし出す。孤児になった娘と詐欺師が未亡人に聖書を売りつける商法でアメリカを駆け回る。目的地は、孤児の親戚の家、そこに娘を引き取ってもらうためだ。詐欺師は、バーで娘の母親と懇意だった。娘は、ひょっとしたら自分の父親ではないかと思ったりする。詐欺師と孤児の心の交流、葛藤、冒険、寒々した時代の同伴者。ついに詐欺師は、娘を親戚の家に送り届け、別れるのだが。
オニール親子の演じた感動的な映画である。ポグダノヴィッチ監督は、脚本を大幅に書き換えて傑作に仕上げた。

紀元前10000年。
2008年、Independence Dayなど最高のヒーローを世に送り出したエメリッヒ監督の新作。マンモスをわなに仕掛けて集落の男が総出で追い詰め、槍でしとめて糧にしていた時代。壮絶な生きるための闘いのシーンは息を呑む。そのリーダーが酋長の槍を伝承していく古代社会が舞台。貧しいながらも平和に暮らす集落に突然、騎馬隊で襲撃した異邦人たち。村を焼打ち、殺し、多くの村人を遠く離れた国に奴隷として連行する。恋人を奪われた青年は、3人で足跡を追いかけ、覚悟を決めて村人たちを救出する長い旅に出る。恐竜との闘い、壮大な大自然、砂漠、切り立った山岳地帯、雪の中を追いかける。GGも駆使、壮大な古代社会、大自然の再現に成功している。いつしか目的の神官支配の地が近づく。その途中で、同様に襲われ、村人を奴隷として連行された村々の若者が結集はじめる、ついに侵略者の拠点にたどりつく。奴隷は、大河のそばのバベル、ピラミッドのような建造物をつくるために酷使されていた。はたして戦闘に勝利し、恋人ともに郷里に帰れるのか。ヒーロー誕生は最後まで分からない。

ジャンパー
2007年アメリカ映画。
いつでも地球上のどこへでも瞬間に移動できたら、どんなにいいだろうか。
スターウォーズの主役クリステンセンのクールな熱演とボーンアイデンテティーのリーマン監督の演出でその夢をかなえてくれる。でも敵対者の一味との格闘という運命が超能力者を襲うという奇抜なシナリオ、冒頭からノンストップで時間のたつのを忘れる展開。
15歳のとき、氷が割れた川に落ち、命からがら図書館にワープして脱出した青年デヴィッド。その時、自らの超能力、瞬間移動に初めて気がつく。母が家を出て以来、アル中の父と暮らす普通の高校生がここから変身する。家を出て、放浪の身に。ガールフレンドも世間も溺死したと思い込んでいたが、銀行の金庫から大金をちゃっかり自分のものにしてリッチな毎日。でもその事件は世間の耳目を引き、世界にいるジャンパー狩の殺し屋集団パラディンの首領ローランドから命をつけねらわれることになる。超能力者ジャンパーとパラディンの闘いは世界中で続いていた。それから8年、ローランドの襲撃の危機を危うく脱出して真っ先にデヴィッドが行くのは、アル中の父親がいる我が家、ここで5歳のとき家を出た母親の写真を持って出る、そしてかつてのガールフレンドのもとへ。彼女を誘って彼女の夢だったローマへ旅立つ。しかし、そこにもパラディンの追っ手が迫る。その舞台はコロッセオ。彼女の身が危険にさらされるため、デヴィッドは彼女一人アメリカに帰国させ、一人のジャンパーと組んで殺し屋たちと立ち向かう。舞台は、エンパイヤステートビル、エジプトのスフィンクス、プラハ、ロンドン、パリ、東京、ルイジアナと世界中でスリリングなロケが敢行される。圧巻は、初めて撮影許可の出たコロッセオ内部のバトル。死闘が終わり、18年ぶりについに母のもとを尋ねあて、出奔した理由を聞く。母には、息子を殺すか、家を出るしかなかった。母は、パラディンの一味だったからである。
映像は、実に美しく、大胆なアングルで息つく暇もない。実物のコロッセオ、スフィンクスのてっぺんの映像は必見だ。

インディージョーンズ
シリーズ19年目の4作目。2008年最新作のタイトルは、クリスタルスカル。プロローグからエキサイテイング。1956年のアメリカの秘密軍事基地、ここで原爆実験をおこなうが、ソ連の諜報員との闘いに巻き込まれたハリソンフォード、原爆の効果を測定するため人工的に作られた街で核実験のテストに遭遇、冷蔵庫に逃げ込んで難を逃れる奇想天外のシーンから刺激的な映像。ストーリーはソ連のスパイ、軍事舞台と争いながら、アマゾンの奥に眠る古代帝国の遺跡の中に、水晶のような頭蓋骨クリスタルスカルを追い求める。スリルとアクションの連続、いつもの調子で楽しませてくれる。

ゲットスマート
2008年アメリカのコメディー。国際犯罪組織を相手にさえない新米諜報員スマートが敏腕女性スパイとコンビを組んでひと暴れ。

12人の怒れる男
1957年の法廷ドラマで大ヒットした作品を現代ロシアを舞台にリメイクした作品。
2007年のロシア作品。チェチェン人の青年がロシア人将校の義父を殺害した事件が発生、重罪の表決は時間の問題、と言う状況だったが、陪審員12人の160分のドラマで意外な展開に。たった一人が、無罪を主張したために、えんえんと会議は続いていく。議論を重ねる内に無罪の表決がふえていく。少年の目に映ったロシアチェチェン紛争の生々しい映像が回想されていく。銃撃戦は戦慄の市街戦だ。

ダークジャーニー
1937年のイギリス映画。日本でのタイトルは「間諜」。
何とういういしい。銀幕のプリンセス、ビビアンリーがスパイ役を演じている。1918年のヨーロッパが舞台。彼女は、ストックホルムを拠点にパリで高級婦人服を仕入れる仕事をしながらドイツのスパイを装っているが、実はフランスの二重スパイ。情報伝達のツールは古典的で面白い。ヨーロッパの華やかな上流社会が舞台、そこでコンラートファイト演ずるドイツ軍将校と恋に落ちるが、彼は諜報部幹部。二重スパイを見破る。スパイ活動で国外退去になった彼女はすでに船で出国していたが、ドイツ将校は潜水艦であとを追い、彼女を逮捕しようとする。スパイが逮捕されると厳しい罰が待っている。ついに拘束、そのときイギリス駆逐艦があらわれ、戦闘に。ドイツ将校が逆に拘束され、船で連行されるのをビビアンリーが見送る。若いビビアンリーの魅力がスクリーンにあふれ出ている。開戦前の緊迫感はなく、どこかメロドラマ風だ。

1947年製作の映画ニューオーリンズ。
ミシシッピの流れる流域の町。ジャズが世間にあまり知られていない1917年のアメリカの南部。ニューオーリンズの盛り場ベイスン通りで、ルイアームストロング一座の即興演奏が人気を博していた。キャバレーオルフェ。ブルースがここで生まれた。賭場もあわせて経営するデコルドバ扮するオーナーは、ドロシーパトリック扮するオペラ歌手と恋に落ちるが、厳格な母親の猛反対に。しかも、風紀が悪いという名目で、盛り場一帯は強制的に閉鎖に。ジャズバーも閉鎖に。しかし、オーナーはくじけずシカゴで心機一転、ジャズバーを始めるが、これが大当たり、アームストロング一座は全米の興業で引っ張りだこに。一気に全米にジャズがヒットし、クラシック音楽一辺倒の市民にもファンが急増する。そして賭博から足を洗ってジャズの普及に努めていたオーナーは、かつての恋人と母親に再会する。クラブオルフェのジャズバーの雰囲気には、忘れがたいものがある。バンドのメンバーの表情が皆明るく生き生きとしている。

1949年のフランス映画オルフェ。
ジャンコクトー監督のモノクロの名画、たしか鑑賞は3回目になる。愛する人と死別し、恋人を求めて黄泉の国を捜し歩くという説話は、洋の東西にある。ギリシャ神話のオルフェウス、日本書紀のイザナギの物語はとりわけ有名。第二次大戦で多くの人間が亡くなっている。その慟哭の戦後にあって、かくもロマンテイックな映画が生まれたところに、フランス芸術の奥の深さを感じる。

凱旋門
第二次大戦が勃発する直前の息苦しい時代、1938年ごろのパリが舞台。イングリッドバーグマンとシャルルボワチエの演じた悲恋の物語。二人の出会いは、夜、雨の降るセーヌ川のほとり、ナチスに恋人を殺害された傷心のドイツ人医師、彼は当局におわれる亡命者である。偶然、セーヌ河畔で絶望にうちひしがれた若い女性に出会う。いつしか「太陽を浴びて過去を洗い流そう」と保養地に旅行する仲に。しかし、ある日、医師は、パリの繁華街の事故で重傷を負った市民を見て見ぬふりができず、危険を承知で応急手当するが、かけつけた警官に身分を問われ、亡命者であることが発覚、国外追放となる。残されたバーグマン、連絡もない日々、そこからドラマが始まる。悲しい結末が二人を待っている。
学生時代に見て、感涙に咽んだ記憶がある。55歳になっても感動の深さは変わらない。ボワチエがセーヌ川のほとりで紫煙をくゆらせるシーンに感じ入って、実はタバコを覚えた、その意味でも忘れられない名画だ。1948年の製作、10年前のパリの風景、世情の一端が伝わってくる。バーグマンが提案したシナリオで、当初反対にあったが、彼女が独立して最初に彼女の強い意思で製作した映画である。銀幕のプリンセスが次に挑戦するのは、あの不朽の名画ジャンヌダルクだった。

ピアノの詩人ショパン
彼の生涯を描いた1944年のアメリカ映画、A Song To Rememberは名画である。少年期からロシアの祖国弾圧に反発していたショパン、ある席でロシアを批判したため亡命するように出国。友人からポーランドの土を餞別におくられる。若干22歳でパリにやってきたショパン。売れない芸術家の苦労が始まる。そんな時、リストが彼の才能を認める。まもなく男装の麗人、作家としてパリで有名だったジョルジュサンドと恋仲に。しかし、いつしか喘息の持病の詩人との仲は冷え込んでいき、臨終にも彼女は駆けつけなかった。不仲になった原因は、マリシュカの原作によれば、病弱のピアニストの健康を気遣い、社交界には出ずに、こもって作曲活動に励むべきだと主張するサンドにショパンは従わず、体の無理を押して演奏活動に出発したことである。社交界の花形になったが、無理がたたり、若死にする。そこまでしてショパンが、演奏会活動を始めたのは、祖国ポーランドの動乱で逮捕された友人たちの釈放のために、保釈金をかせぐためであった。音楽学者によると、ショパンとサンドの別れには、もっと複雑な事情が込み入っていたようである。政治的な動機の強調は、この映画が戦争中の作品であることを想起させる。

エイリアンVSプレデター
ビデオ会社の宣伝文句を作るライターに友人はいないが、この世界には実に文才がひしめいていると感心する。この帯宣伝も一見してためわらず見ることに。
「全世界が待ち望んだ映画史上最凶、最悪の対決」
驚異的な映像と破天荒なシナリオ、これ以上のバトルはたしかにそう見当たらない。人間界の戦争を他の生命体から見ると、この映画のように見えるかもしれない。ホラーアクションとしては必見の価値あり。古代ピラミッドの建築、コンピュータ解析、生贄の儀式など興味深いシーンが続く。夏のけだるいときに見るのが良い。多少なりともひんやりして、暑さを忘れるだろう。実に見ごたえがある。

伝説の英雄カスター将軍
彼を描いた壮烈第七騎兵隊。カスターは、陸軍士官学校の劣等生だった。学生時代秀才でなかったものが、その後の努力で大成する典型的なタイプ。南北戦争で決死の戦闘をみずから陣頭指揮し、ゲチスバーグで敗色濃い北軍を逆転勝利に導く。死を恐れぬ勇気ある行軍は北軍のヒーローとなる。安全な本部で命令を下し、ノモンハンなどで負けても現地司令官に責任をとらせた旧満州陸軍幹部とはえらい違いだ。
インデイアンと平和共存の協定を結ぶために汗をかくが、鉄道施設をもくろむ欲の皮の突っ張った政財界人の陰謀で戦乱状態に、死ぬ決意をしてこころならずもインデイアンとの戦いに、そして包囲され部隊は全滅する。アメリカ史に残る壮烈な戦闘、妻との別れの挨拶、雄雄しい指揮を淡々と映画は描く。カスターの未亡人は、政府財界の陰謀を敢然と指弾し、夫の名誉を回復する。
原題は、They Died with Their Boots On

ウルトラヴァイオレット。
映画には、憂さを晴らしリフレッシュする効果が大きい。ストレスをためないように心がけているが、音楽とならんでこのジャンルの映画が自分には性分にあうようだ。
ウルトラヴァイオレットは、バイオハザードシリーズで超人気のミラジョヴォヴィッチ待望のサイバー未来戦争映画。期待通りのできばえ。息もつかせぬスリリングで奇想天外のシナリオ、94分間も浮世を完全に忘れさせてくれる。ハリウッドの映画にかける意気込みと超一流のスタッフの総合力にはうなってしまう。
アニメから抜け出たような強く度胸のある美女は、現代社会が求めてやまぬスーパーヒロインである。シガニーウエーバーをはるかに超える魅力的なスターが誕生した。

Song of Love 愛の調べ。
シューマン夫妻の物語の映画化。
一見地味な音楽家の実話を題材に映画化したプロデューサーの芸術的感性豊かさに敬服する。1947年のアメリカ映画。キャサリンヘップバーンがクララを演ずる。随所に事実と異なるようなシーンがあり、気にはなるが、19世紀前半の当時のドイツ社会をうかがい知る上で若干の参考にはなる。ただ、ヘップバーンの明るく健気で可憐な振る舞いは、クララの実像に極めて近いように察する、とくにクララ未亡人が、皇帝の御前演奏でトロイメライを弾くシーンは、リストが悩める高貴な尼僧と呼んだにふさわしい面影をヘップバーンは表現しきった。
結婚してからの芸術家としてのロバートの苦悩、ドイツ革命ですさんでいく時代背景への葛藤、夫のそばで必死に支えるクララの実像は、ほとんど捨象されている。伝記映画としての評価は低くならざるを得ない。

1937年のイギリス映画、無敵艦隊。
若いころのローレンスオリヴィエのいけめんには正直言って驚く、中年役を演じたハムレットやスパルタカスの映画でのover the hillの印象が完全にリセットされた。16世紀、イギリスはスペインと一触即発の危機に直面していた。何度か暗殺未遂の憂き目にあったエリザベス女王は、敵国との内通者を調査していた。女王の命令で若い貴族が敵国スペインの宮殿に命がけの情報収集に出かける、国王に会い、たくみにイギリスの貴族でスペインに通じているものを聞き出す危険なスパイ役だ。世界に冠たるスペインの無敵艦隊アルマダがイギリスに迫りつつあった。
オリヴィエ演ずる若い貴族は、結局老獪なスペイン国王に正体を見破られて決死の逃走をはかり、見事に使命を果たして帰国する。エリザベスはその情報をもとに身内の敵を一網打尽にしてアルマダに立ち向かう。石炭を積んだ多くの小船で大軍に近づき、一斉に火を放つ作戦でアルマダを壊滅するというストーリー。
原題は、Fire over England、主役はフローラロブソン演ずるエリザベス女王の感がある。スパイ役を命ずる冷徹で老いたエリザベス、命を捨てる覚悟の恋人を失うまいと止める恋人(ヴィヴィアンリー)、父がスペイン軍に捕えられ異端者としてリスボンで火刑となったときのことを悔いる若き貴族、決死のスペイン行きを前にした三者の心理描写が見所。

レイ
2005年アカデミー主演男優賞。第2次大戦後の貧しいアメリカ黒人社会、街並み、ミュージシャンの世界が実にリアルに描かれる。
新作なのになぜ廉価版で出るのだろうか、不思議だ。アメリカのジャズのヒーローだが、日本ではあまりファンが多くないと言うことだろうか。レイは、子供のとき、失明するが、苦労しながら成功の階段を上っていく。しかし、サクセスストーリーではない、麻薬におぼれ、家族のために更生するときの苦悶がリアルに描かれる。ここが映画のクライマックスのようだ。興行の世界のうら舞台も見える。ゴスペルの音楽が彼の血肉になっているように感じる。子供のころ、ふざけて遊んでいた弟を水死させ、母を嘆き悲しめた罪の意識が生涯トラウマになって苦しんでいた。
この映画で、彼の音楽、というよりジャズ自体が身近に感じられるようになった。

未完成交響楽
1933年のオーストリア映画。古いモノクロの映像だが、現代のカラー映画に優るとも劣らないほど、表現力は大きい。シューベルトにそっくりの役者が、端正で繊細な芸術家をうまく演じている。切ない悲恋を未完成に終わったシンフォニー作曲の背景にしたてたストーリー、真偽は知らないが。質屋かよいの貧乏だった彼の青春時代を見事に描いている。貧しかったことは誰でも知っているが、貧困の中から天使の歌声がどうやってひらめいたかが垣間見える。ベートーベンも意中の女性との結婚を身分の問題で断念したことがあったようだ。映画は、19世紀前半のウィーン社会を舞台に、今とはちがい身分の違いがどうにもならなかった時代の息苦しさを巧みに描いている

レミゼラブル
ユーゴーの傑作。パン一切れを盗んで19年も投獄されたジャンバルジャン。当時の刑罰の怖さ、貧民街の情景、フランス革命後のすさんだ社会は想像を絶する。
バルジャンは、神父の情愛にあふれた言葉に立ち直り、市民思いのビゴー市長にまでなったが、ジャベル警部が彼の過去に気づき執拗にジャンを追い詰めていく。うそをつけないバルジャンは、過去を認め、娘と逃亡生活を続ける。ジャベル警部役とコゼットの哀れな母親役が最高のできばえである。ジャンが逃げる運河沿いの風景やセーヌ川、市民革命、パリの下水道の映像が19世紀の雰囲気を残し、秀逸の映像だ。

エミールゾラ
文豪ゾラの伝記。映画アカデミー賞に輝いた戦前の感動的な傑作である。セザンヌとパリの屋根裏部屋で同居していた若き日の売れない作家時代。ここから、ストーリーは、始まる。
セザンヌが彼の元を去り、功なり名をとげた晩年のゾラをある事件がおそった。彼の人生は一変する。
スパイ嫌疑の冤罪として歴史的に有名なドレフュス事件である。フランスの良心として危険を覚悟で決死の弁護に立ち上がったゾラ。
部下を口止めし、世論を扇動し、裁判所やマスコミに圧力をかけながら、隠蔽工作に必死の軍上層部との闘いは圧巻である。

ジョンQ
アメリカには、現在5000万人もの無保険者がいると言う。もし、医療保険がないばかりに、愛する人の治療を病院に拒否され、死の宣告に直面したら、あなたはどうする。

あきらめるか、それとも。この問いかけは深刻なテーマである。「ジョンQ」は、アメリカ社会の暗い断面を背景にしつつも、熱い感動で人々の心を動かした。

父親ジョンが失業し、夫婦、男の子黒人の3人家族は途方にくれる。でも家族は朗らかに次の仕事を探して頑張ろうと、前向きに生きていた。ところが、愛する息子が不治の心臓病で救急病院にかつぎこまれ、心臓移植しか助からないと宣告される。

父親の医療保険の契約では、とても高価な子供の治療費は出せない。冷蔵庫など家財を売り、夫婦で働き、友達からのカンパと、涙ぐましいあらゆる手段を講じるが、治療費には到底及ばない。保険適用の申請書類をたらいまわしにされた挙句、手術は無理だと病院から引導をわたされる。ついにジョンはぶち切れた。

ジョンは、病院を閉鎖、銃を確保、人質をとって立てこもり、息子の治療を病院に要求する。かけつけた警官隊はジョンの射殺を企てるが失敗。警官隊と関心を持つ群集、マスコミの見守る中、人質解放交渉が行われるが、群衆は、ジョンの気持ちを理解し、さかんにエールを送り続ける。そうこうする内に子供は危篤に、ドナーの提供も見つからない、ジョンの最終決断は、自殺によって自分の心臓を子供に提供することだった、、、。

愛する家族を守りぬこうとするジョンQ、黒人の名優ワシントンに喝采をおくる。


ノートルダムのせむし男

1930年台のモノクロサイレント映画の名作。文豪ユーゴーの原作。同名のアンソニークイン主演の映画もあるが、2004年6月のパリ訪問で何度と出かけたノートルダム寺院周辺の昔の面影を期待して見た。

映像はかなり古い、寺院前の広場や周囲の家並みは、現代とやや異なる程度だった。撮影時期からして70年前のパリの風景がおぼろげながらわかる。珍しいところでは、当時現存していたバステイユの外観と中の映像が登場する。

舞台はルイ11世統治下の700年前のパリだが、寺院は今と変わらないたたずまいで、古めかしいスクリーンにくっきりと現れる。

ストーリーは、さすが文豪の感動の名作、サイレントでも十分の表現力がある。ただ、役者は、声が出ない分、ややオーバーな表情で演技している。

パリで一番醜いという評判のせむし男が、ある美しいジプシー娘に恋心をいだいていた。映画の大半は、ジプシー娘をめぐる男たちの愛憎のドラマだが、その娘が濡れ衣で絞首刑になる。その直前、教会の高いところから刑場の教会前広場を診ていたせむし男は、危機一髪、怪力で彼女を助け出し、教会内にたてこもり、治安部隊と一人闘う。彼女への恋心も届かず、ひとり哀しい結末を迎える。

雨の朝パリに死す

若き日のエリザベステーラーの主演、カラー映画初期の名作。

僕は、パリを2回訪れた。最初は、20代の時、社会党大躍進の総選挙の最中だった。次は、今年2004年の6月、小沢さんたちと4日間すごした。

戦後のパリの雰囲気を味わえるかな、と期待したが、たしかにカフェのにぎわいや町並み、公園、金持ちのホームパーテイーにその面影が残っていた。

「恋は過程を楽しめ」とは、有名な哲学者の言葉だが、この映画は、その意味ではあまりロマンチックな恋愛ではない。すぐに所帯を持って生活臭がたちこめる中を男女の機微に触れる展開が長く続く。前半はかなり退屈するが、意外な結末に至る後半は、白眉のできばえである。

アメリカ軍の従軍記者が凱旋門とおりを戦勝行進したとき、市民は熱狂的に出迎えた。喜びの歓声があふれかえるシャンゼリゼ通りでキスを交わしたパリ在住のアメリカ人女性と恋に落ちる。結婚し、娘が生まれるが、作家を目指す夫は、社交界好きの妻と次第に不仲になっていく。ある冷たい雨が降りしきる中、泥酔して眠り込んだ夫は、パーテイーから朝帰りした妻を締め出してしまう。妻は夫に申し訳ないという気持ちと許してもらえない失望感で、ドアをたたき続けることをあきらめ、雨の中をとぼとぼ歩きだす。

妹夫婦の家に倒れこんだときは、瀕死の状態だった。ドラマは、臨終での夫婦の抱擁から、事実上始まる。

一人娘の養育を妹夫婦は決して認めなかった。姉を死なせた主人公を妹は許せないからである。やむをえず一人でアメリカに一旦帰った夫だが、再度パリに来て養育を懇願しても、妹の気持ちは変わらない。妻と娘を失い悲嘆にくれる夫が、途方にくれてふと立ち寄ったのが、かつて妻とよく出かけたカフェだった。ぼんやり壁に描かれた妻の絵をながめていると、救いが訪れる、妹夫婦が娘の養育をついに認めたのである。

原題である「パリで最後に目にしたもの」の意味がここで理解される。それは、亡き妻の絵だったのである。母国アメリカに帰っていく父娘がパリの小路を仲良く歩いていくラストシーンに熱いものがこみ上げる。


シルミド

2003年、韓国国民の4人に1人、1200万人がこの映画を見て涙したという、韓国映画史上、最大級のヒット作。

この映画の制作、上映がきっかけになって、政府が長らく封印してきた事実が明るみに出た。政府も事実を認めざるをえなくなったが、このシナリオは、おおかたその史実にもとづいている。

金日成暗殺の密名を帯びた秘密部隊を育成するプランがひそかに政府で作成された。集められた死刑囚など31名の若者は、無人島のシルミド島に送られ、訓練中に命を落とすものが出るほどの過酷な訓練に耐えた。最強の精鋭部隊ができていくが、待てども出撃命令は出ない。それどころかある日、政府は方針を変え、指導にあたった教官たちに対し、暗殺部隊を解散し秘密保持のため全隊員を抹殺せよという冷酷非情の命令を発する。

察知した隊員たちは、自分たちを虫けらのように切り捨てる政府に憤激し、決起、指導員たちを殺害して島を脱出、バスジャックしてソウルに向かう。しかし、大統領官邸に行きつく前に軍に包囲され、しかもラジオで自分たちが共産ゲリラの烙印を押されていることを知り、愕然とする。銃撃され傷ついた兵士たちは、最後に全員が自分の血文字で銘々の名をバス内にしるし、手榴弾で全員自爆する。

トップのご都合で虫けらのように人間の尊厳を否定した国家権力、それを見事スクリーン上で弾劾した現代韓国の言論の力に敬意を表したい。

ブラザーフッド

朝鮮戦争を舞台に兄弟愛を描いた。僕の知る限り2004年映画の中で最高の傑作。結末は大変哀しい。

この戦争は、多くの死者と家族の生き別れを生み出した。現在も38度線による民族分断の形で深い傷を残しているが、意外に朝鮮戦争の実相を描いた映画作品は少ない。敗走する北朝鮮軍がおこなった一般市民の虐殺や赤狩りの名目で韓国がおこなった残虐なスパイ処刑のシーンは衝撃である。

兄は、弟に教育を受けさせるため自分の進学をあきらめ、靴磨きをして母子家庭の生計を支えていたが、理不尽な問答無用の徴兵により戦地に送られる。同じく徴兵された弟を早期復学させたい一心で、軍隊で数々の武勲を立てる。弟は、兄の軍人としてのやりかたに反発するようになる。

兄は、それでも、そのご褒美で弟の復学陳情にかけていたが、泥沼の戦乱のさなか、スパイ嫌疑で妻を殺され、助けようとした弟も韓国軍に逮捕、焼き殺されたと信じ込み、逆上して母国を去り、北朝鮮軍に身を投じる。

兄を連れ戻そうと、弟は、単身最前線で北側の塹壕を捜し歩く、その時凄惨な戦闘がはじまった。銃弾が飛び交い、白兵戦の中で、兄弟は再会。兄は弟が無事南側に帰れるよう、自分を犠牲にして最後の仕事をする。

戦争から半世紀、生き残った弟は戦場で兄の遺骨と慟哭の再開をする。遺骨のそばに、弟の名前が彫られた万年筆があり、それが身元確認になった。それは、戦争前に兄からプレゼントされた万年筆だった。最後の別離の時、兄がきっと生きて帰れるよう弟が手渡したものだった。

シュリ
245万人というソウルでの観客動員数、2002年まで、フレンド250万人に続き韓国映画史上ながらく2位のヒット作である。
北出身の美人工作員スナイパーと韓国保安部員が恋に落ち、結婚の約束までする。挙式が近づいたある日、身ごもっている彼女の前に、かつての上官でテロリストの北工作員部隊司令官が現れ、陰謀に加担するか、自決するかの選択を迫られる。いったんは自決を試みるが、恋人に自分のあまりにも切ない愛の告白を録音メッセージに残したのち、テロリストとして目的地に向かう。
そこは、南北サッカーチームの試合という世紀のイベントの会場。サッカーのスタジアムに爆弾を仕掛け、南北首脳の同時暗殺をはかるシーンがクライマックス、暗殺を止めようとする恋人、そしてスナイパーがまさか自分の婚約者とは、恋人に撃たれて、彼女は息絶える。
留守番電話に残された彼女の伝言を聞くラストシーンは、涙を誘う。
南北分断の悲劇を背景にしたラブストーリーだが、韓国青年に圧倒的支持を得たことが日本人にもひしひしと分かる気がする。

二重スパイ
シュリと同じ主演男優でヒットした。
北から亡命した青年、実は二重スパイだったが、身辺が危うくなり、危機一髪、妻とともに南米に亡命する。こけにされた韓国情報部は世界中を探し周り、ついに発見、射殺する。南北スパイ合戦のスリリングな実相に迫る秀作。

JSA(Joint Security Area)
動員数244万人、2003年まで歴代3位のヒット作。
シュリと並んで大ヒットした韓国作品で、こちらはシリアスな展開、南北38度線非武装地帯でおきた全く意外な人間ドラマの展開。よくぞこんなシナリオが書けたものだ。それが映画になるところに時代の変化を感じる。
南北の国民には同じ民族の血が流れている、平和的な統一を願わずにはおれない。

友へ(チング)
韓国歴史上、空前のヒットとなり、全土にチング現象がわきあがった、という。大人の4人に1人が映画館に足を運んだという。
 ある日、韓国文化のホームページ見ていたら、映画のトップ20が目にとまった。あのシュリが2番で、1番は、チングとある。どんな映画だろうか、ずいぶん探してようやくインターネット通販で入手した。ところがスタートから4分の3は、面白さがわからない。正直言って退屈だった。プサン生まれの4人の幼なじみが成長し、それぞれ成人していく過程のエピソードが続くところは、なつかしい時代のにおいを感じる人は別として、なぜひヒットしたのだろうかと,首をかしげていたが、、、。そのうち、韓国を理解するのは僕には容易ではないと、せんべいを口にいれだした。しかし、結末は、違った。見終わって、ようやく長い過程の意味が分かってくる。

2人はやくざになって、抗争でついに殺しあう関係になっていた。さしみ包丁で殺される直前、二人は、お前にうらみはない、だからハワイに逃げろと互いに言いあう。殺人のあと、残ったひとりは、逃亡生活に疲れて逮捕、裁判に。旧友というタイトルのとおり、昔の友が集まってきた。殺された男の父も拘置所で面会し、30回も息子をさすような実行犯ではない、そして黙秘をすすめた。しかし、やくざの親分として自分が子分に指示したと証言してしまう。独房に戻るとき、昔、海で4人が遊んだころを回想する。「いつのまにか遠いところにきてしまった。さあ、岸辺に帰ろうよ」少年時代の会話で映画は終わる。

70,80年代のなつかしい風物やソウルとは一味違ったなまりのある会話がチングのヒットの一因といわれるが、これが、韓国でながらくナンバー1の映画である。


カル(包丁)
韓国でもっともこわいヒット作、実に難解なストーリーでもある。
英語名はTell me something
男性を次々とばらばらに殺害していくスリラー映画だが、誰が犯人か不可解なのだ。また、動機もよく見えてこない。見終わったあと、そんな話題で持ちきりになるほど、よくできたスリラーサスペンス。
殺人そのものよりも、女性の心理、欺き方の方がこわい。
映画監督の友人がいる。4ヶ国語をしゃべるジャーナリストだが、この映画の真実を知りたいとあまり僕が言うので、何とある日、韓国に国際電話をかけてもらい、この映画監督に真犯人は誰か確認してもらったほどだ。暑い夏に一人で見るのはいかが。
ムードを盛り上げるためとは思うが、画面が全体的に暗すぎて、視覚的に疲れるのは好みではない。

ムーサ(韓国語の武士)
高句麗の使節団が中国皇帝に拝謁を求めるが、追放され、帰国途中に蒙古の軍団と戦うことになる。灰になっても信念、約束、名誉のために戦い続ける高句麗の武士たちの悲劇、感動的なドラマである。
韓国映画の躍進ぶりには目を見張るものがある。

華氏911
話題になったマイケルムーアの華氏911を見る。
よくぞここまでブッシュをコケにしたものだ。石油利権とブッシュ親子の関係は指摘されてきたが、露骨に強調している。大統領選でどれくらい影響があるのだろうか。

なぜ日本で小泉版ができないのだろうか。さすが毒舌評論家ムーアの存在あればこそ、というべきか。


キルビル
全米でまた、日本で大ヒットしているというので、キルビル1部を見たが、単なる復讐と殺戮の連続にすぎない、どこがいいのだろうか。主役の女優が可愛いく、日本刀使いの名人なので、違和感はないが。これを見たら、日本のやくざ映画はもう見れなくなるほどのど迫力だ。
僕の複数の知人はこれが超人気になる世相を懸念していた。

9デイズ
スパイ映画で話題になった9デイズを見る。まだ見ていなかった。
舞台になったプラハの町並みは実に美しい。筋書きは、アタッシュケースに入った小型原爆をめぐる争奪戦だ。いつもは気持ち悪い役回りだが、諜報員の善玉役であるアンソニーホプキンスの老獪な演技はさすがだ。
主役は黒人である。はたしてこんな小型原爆は現実に存在しうるのだろうか。完成すれば世界は破滅だ。

ヘブンアンドアース
中井喜一主演のヘブンアンドアースは、見ごたえのある映画だ。
遣唐使と一緒に訪中し長年、唐に住む剣術家を演じるのが中井。彼の帰国の条件となった最後の仕事は、異民族の婦女子の捕虜殺害の命令を拒否して反逆者となった中国の将軍を殺害することだったが。
唐時代の戦闘シーンは実に興味深い。強盗に狙われるシルクロードの旅がリアルに描かれる。

ヒットラー
ヒットラーの最新映画。
ミュンヘンの監獄に入るところから、全権委任法を成立させる所まで。プライベートの世界もうまく描いている。権力者となってからのヒットラーの記録フィルムや解説は多いが、いかにして伍長が権力者になっていったかが、知りたかった。なぜ民衆はこの狂人にドイツの未来を託したのか、少しわかりかけてくる。

ゴジラ
アメリカ映画ゴジラは、主役の顔のイメージがエイリアン的で、日本の物とずいぶん異なり、まったく可愛げがない。東京の議員会館には刑務所の受刑者が作成した大きなゴジラの模型が飾られている。これは愛嬌がある。僕のお気に入りだ。


コウルドマウンテイン
南北戦争を舞台にした力作の映画コウルドマウンテインを見る。

二コールキッドマンとジュドウローの熱演がはえる名作だ。時代背景は、すさんでいて暗い。アメリカにこんな歴史があったとは驚きだ。

ノーチラス
1億ドルを投資して完成間じかの海底資源開発のプラットフォームをめぐって、その爆破を狙う環境保護を旗印にしたテロリストグループが乗り込んでくる。一方、、その開発で地球の環境が破壊され人類が破滅することを知っている科学者たちが、その危機を回避するためタイムマシンで未来からやってくる。この潜水艦ノーチラスとテロリストが戦いを繰り広げる。奇想天外なストーリーだが、面白い展開である。

欲望と言う名の電車
学生時代に英語のテキストとして紹介された有名なドラマで、衝撃の文芸作品と言える。これでアカデミー賞を受賞したビビアンリーは、色情狂の年増女を演じている。迫真のしかも気品に満ちた演技、モノクロだがまったく無駄のないシーンの連続、若きマーロンブランドの暴力亭主の演技など、名優たちの個性ある演技にはただただ敬服する。
戦後まもない貧しいアメリカ社会を背景にするこのドラマは、とにかくシリアスで、好きにはなれない作品だ。

ラストサムライ
アカデミー助演男優賞を惜しくも逃がしたが、渡辺謙の演じたサムライスピリットに久しぶりにずしりとした感動を覚えた。明治新政府の初期の段階の天皇や重臣たちの言動は興味深い。子供と一緒に2回も見た。
トムクルーズも年をとり、言葉の壁のせいか、表情の陰影がうすいが、着物を着たり、日本文化の中に溶け込んでいくいくつかのシーンは、彼のファンならずとも黎明期の日米関係を想起させる。こういう出会いもあったのだ。最近は、パールハーバーやウィンドトーカーズなど太平洋戦争を主題にしたやや心配な映画がヒットしていたので、アメリカ人にも是非見てもらって、いい日本人像を再認識してほしいものだ。


宣戦布告

日本映画で久しぶりにうなってしまった。有事法制論議の際、話題になった小説の映画化。北朝鮮と思われる某国の工作員と自衛隊との戦い。日本の法令の不備を痛烈に抉り出す。自衛隊出動命令をめぐるリアルな内閣の駆け引きなど、見るものをあきさせない。俳優の演技も皆いい。


壬生義士伝
原作者の浅田次郎さんに衷心より敬意を表したい。
主役、中井貴一の奥さんが試写会で泣いたというが、よくわかる。これは、誰もが、「まっすぐに泣ける」映画だ。日本映画史上、奇跡の素晴らしい名作。生まれてこのかた僕の見た日本映画の中で迷わず一番にあげたい。ゆきづまった日本にあって、忘れがちな大切な何かを想起させてくれる。

「盛岡の桜は石を割って咲く、んでごんす。」 なんとやわらかい響きをもった盛岡弁だろうか。飢饉で苦しむ郷土に妻子を残してきた吉村が、京でよく口にする言葉だったが、彼は、いつも家族とふるさとのことを思い浮かべていた。天下国家のためといいつつも、本音は、愛する家族のために南部藩を脱藩して京都に出稼ぎに来たのだ。そこは、幕末の権力闘争が最高潮に達した最前線、京都。幕府体制側の治安部隊いわばテロリスト集団である新撰組で命をはり、せっせと給金の仕送りを続ける吉村。銭こ、銭こといつもつぶやく吉村を語り部の斉藤ら同僚は、はじめは馬鹿にしていたが、死をおそれず義に生きる吉村の姿に周りの目線は変わっていった。

薩長連合の優勢が次第にはっきりする情勢になっても、幕府側の軍勢にまじって脱出する道を拒んだ。単なる家族思いならば、さっさと逃げ出しただろう。なぜ、彼は、伏見鳥羽の戦いで破れて敗走する幕府軍に身を投じなかったのか。なぜ、新撰組の大義に最後まで殉じ、鉄砲隊の前に刀をふりかざして突撃したのか。

義に生きる志の強さは、吉村を残酷な結末へと導いていく。家族との再会の夢を果たせないまま、藩命により切腹を命じられる。真実は、多くの人の心を激しく揺さぶり、長男も藩主も官軍と戦い戦死していく。


千と千尋の神隠し
次男のすすめでかなり以前からいい映画であることは知っていたが、DVDで見たのは最近だ。感動的な素晴らしい傑作で驚いた。
世界的にヒットしてほしいと願っていたら、2003年アカデミー賞の受賞、本当に良かったと思う。

金融腐蝕列島
見ごたえがある社会派サスペンス。
銀行がどうやって不良債権を回収しているか、過去の乱脈融資の実相、内部のことが見えにくい金融の世界だけに、実に興味深い。

クロウ(からす)

  撮影中にピストル誤射で死亡した伝説的な俳優、ブランドン・リーのヒット作。父はあの空手スターのブルース・リーだ。1994年の作品。リーの死後、役者を代えて、パート2,3が製作されたが、この映画のできにはとてもかなわない、と言われる。

シナリオは、結婚式を目前にしながら、恋人と一緒に殺害された主人公エリックの哀しくも長い復讐の道のり。何でもクロウ(からす)には、ハロウィン前夜に死者の魂を運ぶという言い伝えがあるらしい。クロウの神秘の力で蘇ったエリックは、悪の権化のような一味と死闘を演ずる。

音楽の基調は、ロックの強烈なビート、映像では、歌舞伎役者のような派手な化粧をしたエリックのいでたちがスクリーンに映える。悪党との壮絶な死闘シーンは強烈でデモーニッシュだが、死んでもなお恋人への純真な想いに生きるエリックの寂しい後姿やブランドン・リーの情念のこもった熱演は忘れられない。


ピースキーパー
人間核弾頭の触れ込みでハリウッドに登場したドルフ・ラングレン。この映画では、アメリカ大統領の原爆発射装置を入れたアタッシュケースを携行する大統領側近の武官を演じる。テロリストに奪われ、ワシントンに向けてミサイルが発射されるが、格闘の末に自爆装置を作動させる。あのアタッシュケースをあつかったスリリングな映画としては傑作である。

ショーシャンクの空に
1974年アカデミー賞は、フォレスト・ガンプ/一期一会がとったが、その年、ノミネートされた珠玉の作品がこれである。
無実の罪で終身刑の刑務所に入れられた囚人の主人公が人間の尊厳を捨てず、頑張りとうし、ついに脱獄すると言うストーリー。
監獄内の人間模様の描写、とくに良心を取り戻した受刑者たちとの心の交流は、時間の経過を忘れさせる。
考えてみると、一般の自由な社会人も形を変えた邪悪な現代社会の因習に取り囲まれた終身刑の受刑者と言えないだろうか。

デアデビル

ベン・アフレッツ扮する盲目の空手の達人で青年弁護士の正義漢が悪党を退治するドラマ。しかし、自分の恋人は守りきることができず、死なせてしまうため、スパイダーマンとは、ずいぶん違った重い感動が残る。コリン・ファネルの演じた悪役は、極め付きの憎たらしい殺し屋である。

悪党をやっつけるパニッシャーを主人公にしたアメリカの映画は、大変多いが、気立ての優しい純情な主人公だけに印象に残る作品。犯罪大国ならではの映画。主人公は、キリスト教の神父に、心の葛藤を打ち明けるが。

アイスパイ

楽しくてスリリングなスパイ映画。「アイ」とはコンタクトレンズをつけて時計をいじると、遠隔地の他人のコンタクトレンズに自分の見ているものが投影されるという新兵器だ。

エデイーマーフィーのユーモアセンスは、ここでも十分に光っている。だからシナリオは結構緊迫していても全体を通じて肩が凝らない。世界チャンプのボクサー役だが、アメリカ大統領の要請でエージェントを引き受ける。舞台は、ハンガリーのブタペスト。東欧の美しい橋と川など風景がいい。悪党の一味に奪われたスチルス戦闘機を奪還するという、おおとりものだ。ドウエン・ウィルボン、ファムケジャンセンのスパイ役も個性が合っていい。


アマデウス
アカデミー章に輝いたモーツアルト異聞の伝記。当時のウィーンで幅をきかしていたサリエリに毒殺されたという設定のピ−ターシェーファー作の戯曲が映画になった。
サリエリを演じた役者は、アカデミー男優賞だが、実に見事な演技である。晩年狂気になって殺害を告白するシーンのリアリテイーは、本当に毒殺だったかと一瞬思ってしまうほどだ。毒殺を信じない立場ではあるが、モーツアルトの内面に確かにせまる迫力を感じる。当時のウィーン社会の描写、オペラ劇場の撮影はすばらしい。

(英雄)ヒーロー
中国の作品で人気作品という。秦の皇帝暗殺をテーマにしたドラマ。
剣さばきは、この映画の見所だが、グリーンデステイニーを見ているので特には驚かない。ただ秦の軍隊の弓矢はすごい。
なぜ暗殺を思いとどまったのか、謎解きの魅力もある。

太陽の帝国
スピルバーグの作品。
日本軍の上海侵攻で両親と離れ離れになったイギリスの少年が、主人公。収容されて死に目にあいながらも耐えながら成長し、ついに終戦で解放されるまでのヒューマンなドラマ。
当時の上海の町並みと日本軍の進軍は実に興味深いシーンだ。

時計仕掛けのオレンジ
これは、愉快で感動的な作品ではない。妙にクリアーな映像で、シニカルな社会派の話題作。暴力、レイプ、殺人の犯罪で14年の懲役を受けた青年が、特別の非人道的な医療措置を受ける。犯罪者の更生という社会問題に目をつけた政治家が、人気取りで更生方法を利用する。

はたして更生はうまういくかどうか。犯罪者の社会復帰に関心をもつ者にとっては、興味深い作品だ。封切り当時、話題を呼んだキューブリック監督の作品。

ターミネーター3

待望のシュワちゃんシリーズ最新作を見たが、1,2作のような緊張感はなかった。スリリングなシーンの連続だが、結局は娯楽映画大作に終わっている。
コンピュータの誤作動で核戦争になるという設定は、かつて映画ウオーゲームなどでもあったが、もう少しリアルに描けば、全体のストーリーに格段の迫力が出たのにと思う。
知事になったから、もう映画には出ないだろうか。


カッコウの巣の上で

アカデミー賞の有名な映画だが、率直に言って退屈で、アカデミーはどうしてだろうと感じる。

精神病院の中の世界を初めてリアルにあつかったという意味なのか、看護婦長役などの俳優の名演技をほめているのか、自分には不明。ビューテイフルマインドという現代の傑作を知っていることもあるが、ラストシーンを別にすれば、全般的にドラマ性に欠ける。

ブラックホークダウン

ソマリアに介入した米軍は、ヘリコプターを中心に作戦をしかけて失敗、その実話をもとに映画が作られた。最新鋭の武器を過信する米軍の将軍のアイデアで奇襲作戦をしかけるが、ヘリが落とされてから、その救出のためにすべてが狂いだす。

このみじめな結果は、イラクでの英米占領軍の現実に似ている。ソマリヤでのこの作戦をはるかに上まわる犠牲者が出ている。


大統領の陰謀
古くなったが、若い頃のレッドフォード、ダステインホフマンらの名演技が光る。ウオーターゲート事件の解明にかける若手ジャーナリストの活躍。史実にもとづくこの映画は、一見の価値ありだ。事実は小説より奇なり、という。こんなことがアメリカ政治にあったとは。


ロード オブ ザ リング
第一部だけで3時間もの大作。

ストーリーは、所有者の理性を狂わせ権力亡者にする魔性の指輪の顛末だ。これをあずかった少年が、思案の結果、それを廃棄するため、遠い異国の火山をめざして出発する決断をする。指輪をねらう魑魅魍魎から少年と指輪を護衛するために選抜された騎士や同郷の幼なじみたちと一緒に、はるか遠い山までの冒険の旅が続く。途中にでくわす怪獣やスリリングな特殊映像もさることながら、原始的で広大な自然をとどめたロケ地の自然撮影はまことに見事である。映像,撮影などの分野でのアカデミー賞受賞がうなずける。

ただ、シナリオがやや単調で内面的なドラマの展開がとぼしいため、自分の好みではない。


指輪第2作
長い映画で、肩がこる。単純なストーリーだが、特殊映像の魅力で聴衆を幻想的な世界に引っ張っていく。

城攻めのシーンは、今まで見た映画の中でも特別の迫力を感じた。そこは、たしかに一見の価値がある。悪の巣窟の破壊されるシーンなどスケールは大きく、原始の自然の撮影は見事だと思う。


シカゴ
男を撃ち殺した女たちの奇想天外のストーリー。アカデミー賞でなければ見なかったと思うが。本来、ミュージカルにはなじめないが、この映画は例外で、一気に見てしまった。女優の演技にはなんとも言えない魅力を感じる。アベックで見るのにいい作品かも。
女性が男を撃つからストーリーになる。弁護士のリチャードギアの演技は見事なものだ。当時のシカゴ市民の女性犯罪に対する心理の分析は、本当かな、とは思う。
ハリウッドの映画は、本当に楽しめる。

戦場のピアニスト
ナチ支配下のヨーロッパは、こんなに恐ろしい時代だったのかと思う。ユダヤ人がナチにどうやって抹殺されていったか、ユダヤ人の目線にたってリアルに描かれていく。ユダヤ人は、なぜ抵抗しなかったのだろうか。
モノクロの時代のワルシャワの雰囲気をポリャンスキーは、実に鮮やかにリアルに再現している。奇跡的に逃亡生活を続けるピアニストの表情、目線、演技は、白眉である。
そしてドイツ人将校が、逃亡生活を続けるピアニストを発見するが、その音楽に感動したのだろうか、見逃し、助けるシーンが、映画のクライマックスになっている。
戦争の犠牲者、ナチの迫害者に衷心より哀悼の意を表する。ポリャンスキー監督は、偉大である。

戦火の勇気
アカデミー賞にノミネートされたアメリカのヒューマンな映画。ネオコンの台頭する国の映画とは思えない。アメリカの良心を感ずる。
誰にも経験があるように真実を語ることはむつかしく、勇気がいる。これがこの映画のテーマである。
湾岸戦争を舞台に黒人の名優ワシントン、撃墜された攻撃ヘリの隊長メグライアンの活躍が光る。
メグライアン隊長は、どんな状況で戦死したのか、真実を求めて懸命に調査するが、生還した兵士の証言はなぜか皆食い違う。事実を隠蔽しようとする軍幹部の圧力に屈することなく、悩みながらも調査に前進する良識派の将校ワシントン。彼自身も、誤射によって死亡した兵士の両親に謝罪することをついに決意する。そしてついに真実が明らかになる。
真実を語ることが、どれだけ勇気を必要とするか。感動的な映画と言える。

ダイ アナザー デイ
ボンドシリーズの最新作。
北朝鮮が抗議したと聞いて、これは見なければと思った。北朝鮮でなくても、ここまでひどく扱われたら、何か文句は言うだろう。
娯楽番組ではあるが、たしかにおもしろい。太陽光線を凝縮して宇宙から地上に照射する新兵器を開発した北朝鮮の将校が38度線を超えて攻撃をしかけるというスト−リー。安心して見れるので肩がこらない。


パットン戦車軍団
1970年のアカデミー賞。アフリカ戦線でドイツ軍戦車隊を撃破した鬼将軍パットン、勇猛果敢、命を恐れず敵に立ち向かう軍人魂はあっぱれだ。
進軍の途中、パットンは、思わずふぬけな新兵をなぐってしまい、大問題になるエピソードがある。この一件は、軍隊内部はもとよりアメリカ国内でも世論の厳しい非難にさらされ、結局パットンは、皆の前で謝罪を余儀なくされる。そればかりか、彼は、左遷させられ、イギリスに赴任を命じられる。日本軍では、部下をなぐるのは、日常茶飯事だった。ここに、日本軍国主義の決定的な、非人間性、野蛮性の一端を感じる。

謹慎中のロンドンで彼は、いつもの失言で世を騒がす。ソ連を批判したのだ。アイゼンハワーはじめ連合国軍は、対ドイツ作戦上、ソ連との関係を懸念して、パットンを第一線からはずす。政治的にうまく立ち回れない愚直さがスクリーンにもにじんでいる。

しかし、死を恐れず、最前線で兵士を鼓舞してまわった将軍、彼の毅然たる不撓不屈の生き様は、何かと軟弱な日和見が跋扈する現代社会にあって、新鮮な感動を与えてくれる。


ビューテイフルマインド
2001年度アカデミー賞に輝いた、まさに最高の賞賛に値する傑作。

ラッセルクロウの演じた天才数学者ナッシュは実在の人物である。彼は、ゲーム理論という画期的な理論を考案し、数学界のスターとなったが、信じがたいことに、若いころから長らく精神病の患者でもあった。奇怪な行動で大学のキャンパスから強制入院させられたナッシュが、精神病院でうけた週5回、10週間のショック療法には、目をそむけたくなる。献身的な妻のサポートで退院して人生をやりなおすが、幻覚がなくならない。苦しい長い道のりが夫婦を待ちうけていた。見舞いにきた学友をして、数学だけじゃ人生ではない、と言わしめるような状態であった。
ナッシュの精神障害のきっかけは、暗号解読の頭脳に目を付けた国防省が彼を謀報活動に利用したことだとされる。以来、ナッシュは、ソ連のスパイが携帯できる原爆をアメリカ本土にもちこむのではないか、との強迫観念にとりつかれる。その秘密組織の暗号を解読し、一人で阻止しようと思い立ち、次第に現実と空想の区別がつかなくなっていく。ラッセルクロウの世界に感情を移入し、やり直しの人生を見守りつつ歩んでいく時間は長く感じる。しかし、ある日、晩年のナッシュにノーベル賞の授与が伝えられるとき、誰もが、ここまで見てきて本当によかった、救われたような気分になる。
さて、実在のナッシュ夫妻は、どんな人生を歩んだのだろうか。夫妻のドキュメンタリー映画、ビューテイーマインドはなかなか入手できなかったが、ようやくアマゾムの通信販売で手に入れた。
ナッシュは若いころ、離婚歴があり、しかも子供を認知していなかった。晩年和解している。子供さんも精神病だったという。


バイオハザード1部作

世界中で2000万本の大ヒットしたゲームシリーズの映画化とは、後で知った。テトリスとマリオシリーズしか知らない世代だからやむをえない。

主演はあのジャンヌ・ダルクを演じた個性派女優のミラ・ジョヴォヴィッチ。ジャンヌダルクの映画は、幾分期待を裏切られた作品だった。ミラは思い描いていたヒロインのイメージからはずいぶん落差がある。映画のジャンヌは、女優の顔だちや演技に左右された面もあるが、神経質でどこか優しさに欠け、こんなタイプの少女が本当に負け戦続きのフランス軍兵士を鼓舞したのだろうかと思ったりする。

しかし、バイオハザードで見せた彼女の強さには、エイリアンのシガニーウィーバー以上に抜群の迫力があり、セクシーである。神経質そうな顔は、むしろ非現実的な緊迫した映画の雰囲気とマッチしている。

細菌兵器研究所でおきた事故でマザーコンピュータは細菌の流出を阻止するため、全職員をハロンや放水で殺害するというショッキングなシーンから物語は始まる。しかも死者や猟犬はゾンビとなって生き返り、ミラや事故調査団に執拗に襲いかかる。これにかまれると伝染する。恐怖の地下研究所からの命がけの脱出ドラマ、息詰まるスリラーアクションの連続である。疲れるが、時間のたつのを完全に忘れてしまう。

なお、インタビュー時のミラの素顔は、別人のように可愛く、映画とはまったく趣の異なる可憐な女性である。2部作が期待されている。

スターリングラード

モスクワを占拠したナポレオンを壊滅的敗北に追いやったのは、ロシヤの冬将軍だった。歴史は繰り返され、ソ連の都市を攻略したナチスドイツも、冬将軍とソ連軍の連合軍に完膚なきまでに打ち砕かれる。この映画は、独ソ戦最大の攻防戦を描いたかつての記録調の映画ではない。市街戦を舞台に次々とドイツ軍将校を狙撃しては、ヒーローに仕上げられて味方を鼓舞していったロシアの伝説的スナイパーの愛と人間的苦悩の物語である。

さて、この映画で、農村から徴用されたソ連軍兵士は、数人に一人しか銃を持たされず、ほとんど丸腰でドイツの機関銃座が構える所に集団で突撃を命じられる。無残にもばたばたと死体の山ができていくシーンはショッキングである。本当にソ連軍は、こんな非人間的な戦争を人民に強いたのだろうか。あまりにもおぞましく残酷である。

情婦
タイトルからは想像できないが、あまりにも有名な法廷ドラマの傑作。ビリー・ワイルダー監督が映画化したのは、アガサ・クリスティ原作の「検察側の証人」。
殺人事件で逮捕された男、敏腕弁護士、検察側の証人として出廷した妻(マレーネ・ディートリッヒ)の3人が繰り広げる法廷での駆け引き。はたして結末のどんでん返しを予測できる人がいるだろうか。
妻の証言の場面は、真の大女優と呼ばれるにふさわしいマレーネの名演技の真骨頂で、政治家になったらさぞ偉くなったと思われる。

モロッコ
20世紀のスーパースター、ゲーリー・クーパーとマレーネ・ディートリッヒの競演。互いに過去を背負った外人部隊兵士と酒場の歌姫が、流れてきたアフリカの街で恋に落ちる。
やがて外人部隊は出発のときを迎える。映画のクライマックスだ。砂漠を行軍する彼らの後を追って一緒に移動する女性たち、なんとなべや衣類を持って砂漠に向かって歩き出すではないか。煩悶する歌姫マレーネ、ついにクーパーのあとを追う決心をする。靴を脱ぎ捨て、はだしで砂漠へ駆け出していく。観客は、クローズアップされた靴のラストシーンをただ見つめるだけである。この感動を言葉で表現することができるだろうか。
二人の名優に乾杯。

ロード トウー パーデイション
昨年のアカデミー賞にノミネートされたギャング映画。妻子を殺害され、殺し屋の襲撃から逃げ続ける父と子の目指すところがパーデイションと言う名の海のきれいな町。
父親と息子の情愛がテーマのストーリーと言える。映像、音楽は印象的で、随所にトムハンクスの演技が光る。
「息子は、父親を悩まさせるために生まれてくる」とは、年老いたポールニューマン演じるファミリーのドンがつぶやく言葉。ハスラーパート1のかっこよかったニューマンもずいぶんふけたものだが、さすがに熟練の名演技。ゴッドファーザー以上にヒューマンなドラマに仕上がっている。
感動的な哀しい結末を迎えるセーウ゛イング プライベート ライアンでハンクスは、アメリカンヒーローを演じきった。
このギャングは、愛する息子のヒーローになりえただろうか。

ウインドトーカーズ
2002年の話題作。サイパン上陸の激戦を舞台とする強烈な戦争アクション映画。同時にベトナム戦争の名作デイアーハンターのように男の熱い友情は胸にせまるものがある。
最近まで秘扱いであったナバホ族の暗号通信兵(ウインドトーカーズと呼ばれる)は、役割を終え、最近のアメリカ議会で賞賛された。ウー監督のすさまじい戦闘場面の描写もさることながら、通信兵を護衛し、捕虜になれば秘密保持のため見方を打たねばならない特命を帯びたニコラスケージの名演技にひかれる。
日本玉砕の戦闘だけに、見る気は正直言ってすすまないが、アメリカ人のヒーロー像と日本軍を凌駕していた通信に対するこだわり、民族の多様性を乗り越えようとするアメリカ社会の強さを再認識する。
ところでパールハーバーもそうだが、太平洋戦争を舞台にした映画がヒットを続けていることは若干気にかかる。

エネミーライン
敵地と訳せばいいのだろうか。ユーゴ紛争がテーマの戦争アクション。
国連軍の偵察機が協定破りのセルビア人民軍に撃墜される。そこからパイロットのランボーのような脱出劇だが、集団虐殺というユーゴ内戦のおぞましい側面が垣間見られる。
トップガンのような空中戦や最新軍事技術である偵察衛星からの地上映像の正確さには驚く。

マトリックス
最近のハリウッド映画の魅力は、非現実的な映像空間にいつのまにか見るものを引きずり込んでくれる舞台設定にある。この作品も大ヒットした映画だが、よくもまあ、こんなスリリングなシナリオを思いつくものだ。うさはかなり晴らしてもらえる。
役者も魅力的だが、ハードなアクションの連続とくにその4次元的映像技術には必見の醍醐味がある。
2部作が製作されたが、抜群の前評判でリリースが楽しみだ。

キリングフィールド 
殺戮の焦土とでも訳せるだろうか。若いころ、激しい内戦を繰り広げた70年代のカンボジアを知りたかったので、一度だけ見た。この敬虔な仏教国で一体何があったのか。実在の記者が書いたピュリッツァー賞受賞作の映画化と聞くが、その限界状況の中で取材するアメリカ人記者と現地人ガイドの見た世界はあまりにも恐ろしい。殺害される恐怖の中での取材だけに割り引くとしても、カンボジア内戦の現実とその荒廃、ポルポトら共産軍がおこなった粛清の残虐さには慄然とする。
死線をともにさまよった記者とガイドの友情のあつさが心に染み入り、彼らの別れのシーンには泣いてしまう。85年度アカデミー助演男優、撮影、編集の3部門受賞をした映画だが、残念ながら2度見る気持ちにはとてもなれない。


バニラスカイ
アクションスターのトムクルーズは、二枚目俳優で現在抜群の人気がある。その美男が、キャメロンデイアス演ずる愛人から無理心中につきあわされ、交通事故で顔がずたずたになってしまう。新しい恋人に救いを求めながら、悪夢と絶望で毎日うなされるトムは、ついに死後の契約にいたるが、その結末は。
シリアスなラブサスペンスである。

インターネット
情報通信が発達すると、コンピュータ通信を悪用して新しいタイプの犯罪行為が可能になる。それに男女の愛憎がからむとスリリングなサスペンスになる。インターネット社会のこわい落とし穴をこの作品ほど明快に表現してくれたものはない。

パニッシャー
人間核弾頭の触れ込みでハリウッドに登場したラルフ・ドングレン。彼のクールで強烈な魅力にあふれたバイオレンスアクション映画。彼の作品は皆見たが、これが一番いい。
ストーリーは、麻薬などでかせぐ悪のファミリーをおいつめていく元警官のお仕置きドラマというよくあるものだが、日本の女やくざの凄腕もクライマックスに登場するなど、日米アウトローが一堂に会し、見るものをあきさせない。妻子を殺された元警官の度迫力のリベンジアクションは、手に汗をにぎるシーンの連続だが、白人の主人公と黒人警官との友情、そして俳優崩れの面白いおっさんの名演技ながヒューマンなドラマ展開の一面をのぞかせる。

天使は森でバスを降りた
このアメリカ映画は、ひさしぶりに出会う傑作である。
まず、こんなに感動的な映画を作製できるアメリカの映画界のレベルの高さには驚く。特に名スターはキャストにいないし、そのシナリオは、最初単調だ。
しかし、中盤からヒューマンなドラマが展開する。途中で見るのをやめることはできない。DVDで最近市販されている。

タイムマシン
シナリオはありきたりだが、恋人を思う純情な若者のアドベンチャードラマ。最近の話題作で、未来社会の奇怪な舞台名設定は、しばし現実を忘れさせてくれる。

ハリーポッター
2002年、世界を魅了した抜群の傑作。ストーリーに夢があり、シナリオの発想は思いもよらない展開と幻想にあふれ、老若男女にとっていい癒しになる。
第二作の秘密の部屋も傑作だった。こんなに魅力的なポッターにはいつまでも年をとってほしくない、と勝手に思ってしまう。
第三作の映画化が決まったが、待ちどうしい。2004年のリリースという。
ところで僕の愛用の読書めがねは、ポッターと同じフレームを使っている。

スパイダーマン
2002年全米ヒット一番の触れ込みで思わず買ってしまった。DVDで見る。
筋書きはシンプルだが、この映画は実にさわやかな感動を与えてくれる。アメリカ人が2002年、一番のヒーローに感じたのは、筋肉隆々の活劇タイプではなく、気立ての優しい、内気な、しかし芯の強い高校生だった。彼が変身するスパイダーマンは正義感と責任感にあふれ、優しいキャラクターだが、これからもアメリカ人のヒーローであり続けてほしい。
大いなる力には、大いなる責任が伴う、これが主人公のせりふの締めくくりだ。素晴らしい言葉だと思う。

2002年ハリウッドの傑作、スターウォーズ
今回の新作は、娯楽映画としては最高。
日本刀をイメージしたジュダイの武器、古代ローマの競技場を連想させる処刑場、地球で最も美しい湖畔の夕暮れなど、古今東西の魅力的な文明、自然のモザイクをうまく組み合わせている。楽しくて時間のたつのを忘れてしまう。

グリーン・デスティニー。
アメリカ中国合作のこの映画は、オスカー4部門他、世界の映画賞を総ナメにした2000年のアクション大作。出演のチョウ・ユンファ,ミシェル・ヨー,チャン・ツィイー,チャン・チェンは初めて見る俳優だが、実にいい男いい女で、4人ともまれにみる空手拳法の達人。伝説の秘剣グリーン・デスティニーを巡り、4人の男女が繰り広げる、愛と復讐の壮絶な死闘がうたい文句で、期待を裏切らない作品といえる。
全体的に、鮮やかでシックな色調のスクリーンで、幻想的な世界をうまく演出しており、なぜアカデミー賞を受賞したか、その理由がうなづける魅力的な映画。

武器よさらば
不朽の名作。古い映画だが、現在のけばけばしいスクリーンにはない実に美しい映像だ。
ドイツ軍の進撃のため、やむをえずイタリヤ軍が、傷病兵を病院に置いて退却するとき、神父は死を覚悟で傷病兵と一緒に残るが、軍医は軍隊とともにすすむ命令をうける。地獄の退却の途中で軍の非人間性を口にしたため、軍医が反逆罪で銃殺されるショッキングなシーンがある。おぞましい戦争の断面だが、そこからが、ドラマの事実上のスタートだ。
命がけで恋人と一緒に戦争から逃げるが、あっけなく哀しいラストが待っている。
グレゴリーペックが、一人並木道を歩いていく寂しい後姿のラストシーンは忘れられない。

ローマの休日
20世紀中葉の映画関係者のエレガントな芸術性、センスの良さは、モノクロの単調さを補って余りある。息子が将来結婚するときに、プレゼントしてあげたい。ヘップバーンやペックのような俳優は、もう現れないのだろうか。
同じ脚本でトムハンクス、メグライアンのコンビが演じたら、どんな雰囲気のデートになるのだろうか。ジュリアロバーツ、スパイダーマン役では。やはり違う気がする。
ほかに代替できないものこそ、本物だ。

街の灯
誰しもこの映画だけは、心から泣けてしまう。映画の真髄は、音響、カラーやカメラアングル、こったセット舞台、奇をてらったコンピュータグラフィックスではないことが理解できる。愛すべき天才アーティスト、チャップリンに拍手喝さいをおくって、感謝の意を表したい。

チャップリンの生涯
カラー作品。これには、知られざる彼の生き様の一端が描かれている。極貧の少年時代、気のふれた母の存在、作品のアイデアが出てこないときの苦悩ぶり、赤狩りの犠牲になってアメリカを去る背景、彼の作品では窺い知れないエピソードの連続。女性遍歴とトラブルの連続には、映画で女性を勇気付ける彼の優しい面影がまったく見えてこない。
でもチャップリンは、20世紀の十指に入れるべき偉大な芸術家だ。彼の人生そのものも、感動的な一つの作品だ。

アメリカのCNNテレビのノンフィクション番組、アフガニスタン
驚きの連続。女性レポーターの突撃取材だ、タリバン政権の信じられないほど残酷な支配の断面がよく映し出されていた。
今になってみると本当だったなあと思う。

一昨年末は、大作の大地の子の再放送をビデオにとって見ながら、年を越したが、この大河ドラマには、なけてしまう。
北京訪問の際、中国政府高官の集まりで聞いてみた時、誰も見ていないと答えたのが、忘れられない。
中国映画で感動的だったのは、文化大革命期を健気に生き抜いた女性の物語である芙蓉鎮、近代中国のあまりにもリアルな断面が描かれている。この作品については、先の高官たちはいい映画だとうなずいた。
ラストエンペラーの中国作品は、淡々と落ち目になった溥儀の後半生を描いているが、後妻役の女優には(現実とはかなり違っていたらしいが)美人の役者を使い、なかなかの名演技である。彼を利用した中国共産党幹部の味のある振る舞いも印象的だ。

ローマ帝国の崩壊、ベンハー、エルシド、アラビアのロレンス、北京の55日、五味原作の戦争と人間、トルストイ原作の戦争と平和、ケビンコスナーのJFK、キリングフィ−ルド、パールバック原作の大地、凱旋門、カサブランカ、駅馬車、モロッコ、第三の男、チャップリン。いずれも忘れられない傑作作品だ。

エアフォースワン、インディペンデンスデイ、アルマゲドン、第3次世界大戦、アメリカならではのスケールで、いつもヒーローが、大活躍する。

シリーズものでは、アガサクリスティ、猿の惑星、ホームアローン、インディジョーンズの冒険、スターウォーズです。
元来は、ハリウッドのアクション映画が大好きで、ストレス解消にも打ってつけだ。

ハリソンフォード、スターローン、シュワルツネッガー、セネガル、ラングレン、ファンダム、チャックノリスの作品は、ほとんどすべて見た。

おしん
リバイバル、あの名作がテレビに帰ってきた。やはり人一倍苦労した少女時代には何といっても、胸が一杯になってしまう。
不可解だったのは、トーマスマンのベニスに死す、ワグナーのパルジファルの映画版、いちご白書、ベルイマンの作品、どれもこれもさっぱりわかんない作品だ。
アカデミー賞の羊たちの沈黙、審査員の採点方法が分からない。強い女ジョデイー フォスターは確かに魅力的だが。ハンニバルにいたっては、途中でもういやになってくる。氷の微笑とか、映画に猟奇趣味を持ち込んでどうする気だろう。
狂気を描いた作品でも、ドイツ皇帝ルードウ゛ィッヒは味わい深いが、ワグネリアン以外に見に行く人がいるのだろうか。