歴史スペクタクル映画

サムソンとデリラ
旧約聖書にある紀元前1000年ころの豪傑サムソンの有名な物語の映画化。古い映像だが、当時としては豪華絢爛の歴史スペクタクル映画として喝采をあび、美術などアカデミー賞3部門を受賞した。1949年、アメリカ作品。
ライオンを素手で倒すほど、サムソンは、怪力の持ち主だったが、その秘密は、髪の毛にあった。女性にほれやすく優しい英雄の哀しい末路を華麗に描かれる。ぺリシテ人の王は、逃亡したサムソンをつかまえるために、軍隊ではなくサムソン出身の集落に重い税をかけて彼をあぶりだす。この時代から、イスラエル地方は、民族間の争いの地であった。旧約聖書は、随所におもしろい物語がでてくる。

キング アーサー
ローマ帝国の統治下にあって当時ブリテンと呼ばれていた古代のイギリスが舞台。有名なアーサー王伝説の2004年の映画化。
パールハーバーのプロデューサーの作品でスケール、キャスト、迫力は申し分ない。
ただ、ストーリーは、通説と異なっているところがある。
たとえば円卓の騎士ランスロットは戦死してしまう。円卓の騎士は、小説を愛読したものからすると、随分ださいイメージがある。およそ気高い聖杯をいただく憧れの中世騎士物語ではない。どちらが事実に近いのだろうか。
外敵ローマ軍と闘ったブリテンは敗北し、ついにローマの支配下に入る。勇敢に闘ったサルマートの騎馬隊をローマは生かし、徴兵の伝統を作った。紀元300年にサルマートに実在した勇敢な騎馬隊の部族に生まれた武将こそアーサー王のモデルだ、と原作者は考古学的研究にもとづいて脚本化している。その最近の研究を知らない。
この映画では、ローマの属国を強調し武装した原住民サクソンをローマへの叛乱軍と単純にレッテルをはっている。全般的に古代の民衆社会は貧しく暗い、と言う先入観にたっている。
戦闘シーンの再現は、リアルで迫真の緊張感がある。音楽はロンドンフィルの演奏でいい。古代の城壁のセット、大自然、衣装、原住民の刺青などの再現は見事だ。一方、謎の騎士アーサー王の生い立ち、騎士たちに信頼されるにたりる人物像のえがきかたはなかなかいい。

ジャンヌダルク
1920年.ローマ教皇は500年前に異端として裁かれ火刑に処せられた19歳の彼女を聖女の列に加えた。異端裁判の過ちをやっと認めたのである。
イングリッドバーグマン主演の傑作で歴史は鮮やかによみがえる。

イギリスに負け続ていたフランスでは、諸侯が分立、中にはイギリスと手を組むものもおり、イギリス国王がフランス国王を名乗るような有様である。国王とはシノーヌ地方を統治するだけの名ばかりの存在、そんな時、ロレーヌの田舎娘が神のお告げを聞いて、フランスを救うため、皇太子に会いに行く。最初は笑いものにされるが、熱心に皇太子との面会を求め続けるうちに、預言者だとの噂も立ってきた。ついに皇太子との面会をはたすが、3週間も教会の調査を受ける。ジャンヌはひたすら皇太子にイギリスの支配するオルレアンへの出陣を迫る。ジャンヌの指揮の下にフランス軍は決起する。そしてついにオルレアンを攻め落とす、それからは勝利の行軍が続く。パリをのぞいて。

皇太子は国王に即位したが、イギリス軍とそこと手を結ぶバーガンデイー一族からたくみにカネで買収された新国王は、陥落寸前のパリ進撃を断念、イギリスと和平の協定を結び、ジャンヌの軍隊を解散してしまう。パリにしがみついていた窮地のイギリス軍に、まんまとフランスはのせられたのである。国王に失望し憤慨したジャンヌは、孤独な決意のもとに進撃、ついに捕らえられる。ここは、史実がどうであったか知りたいところだ。

イギリス軍の牢に鎖につながれた彼女は、何と5ヶ月間も宗教裁判にかけられる。イギリスは、ジャンヌを殉教者にさせないよう、政治的にうまくジャンヌを殺すために、手のこんだ宗教裁判の舞台を設定した。この長い裁判シーンが、映画のクライマックスである、バーグマンの演じた気高いジャンヌはあまりにも美しい。彼女を詰問する豚のように肥えたキリスト教会幹部の表情には、権力と結託し、迎合し、堕落した宗教屋の醜さが強烈に映し出される。

最後には、教会の牢と女の看守に代えてもらえるとのうそに乗せられ、そして火あぶり刑を逃れるため、ジャンヌは裁判で偽りの自白を強いられ、自分の罪をいったん認めてしまう、そして終身刑の宣告。しかし、イギリスは教会の牢に移さなかった。嘘だったのである。映画では、尋問記録が記録されていくが、現存しているのだろうか。

命欲しさに自分を裏切ったジャンヌは、自分を責め、そして牢で神に祈る。涙しつつ自分の弱さに打ち勝とうとする。翌日、信仰なく生きることは火あぶりより怖いことだときっぱりと宣言する。魔女として神を冒涜した異端として火あぶり刑で、ジャンヌは十字架を胸に抱いて息絶える。

現在、ルーブル美術館の北側に馬上のジャンヌの金箔の像が建っている。わずか1年の活動、19歳の若さでこの世を去った。

円卓の騎士 ナイツ・オブ・ザ・ラウンドテーブル
古い映画だが、あまりにも有名な中世イギリスにおける円卓の騎士物語だ。ランスロットはロバートテイラー、王妃はエバガードナーが演じているが、気品があり、美しい。

当時、ローマ軍の撤退でイングランドには暗雲がたちこめ、諸侯の抗争で国は荒廃していた。諸侯は、闘い、話し合ってようやくアーサーを国王に選出するが、ねたむ勢力は虎視眈々とアーサー王を倒すチャンスを伺っていた。なかでも国王の片腕として全土の平定に駆け回るランスロットが邪魔であった。そこで国王と永遠の友情を誓ったランスロットの仲を裂くチャンスをねらい続ける。

ついにアーサー王の王妃がランスロットの部屋を訪ねたところを押さえる。円卓の騎士である諸侯の投票でいったん二人の死刑が決まるが、王は、その決定に反し、王妃を逃がした後自首してきたランスロットを国外追放処分、王妃を終生修道院に幽閉とする。王と言えども法を守らねばならない時代、権威を失った王に対する反乱がおこり、王は戦争で死ぬ。
息を引き取る間際にかけつけたランスロットに、王は、王妃を愛するがゆえに赦す旨を伝言してほしいと伝え、ランスロットに国の再統一を命じる。

ランスロットは、政敵を決闘で討ち果たしたあと、円卓のある国王の広間に膝まつき、従者のパルジファルとともに聖杯を光の中に見出すところで幕は下りる。

伝承ではランスロットの息子がのちに王となった。

小学生の時、騎士物語の本を何十回も愛読した記憶では、もっとロマンチックで厳粛な騎士道の魅力が感じられた、映画はラブロマンスを強調しすぎではないだろうか。


スパルタカス
 1960年、アカデミー賞4部門を受賞した3時間の大作。ローマの奴隷制に反抗し決起した剣闘士の一大叙事詩。シーザーがまだローマ軍の将官を務めていた時代に実在し、ローマの支配者を震撼させた人物をモデルに描かれた歴史スペクタクルである。主役のカークダグラスが製作者でもあるが、よくぞ歴史に残る超大作を製作したものだ。ハリウッドの偉大さに敬意を表する。奴隷出身で女房になる役のジーンシモンズは、清楚で美しい。

鎮圧部隊を撃破しながら反乱軍は、老人や女性、子供と共同生活をしながら、南下し港から船団を組んで生まれた故郷に帰ろうとするが、船の手配を頼んだ仲介者に裏切られ、ローマの大軍に包囲される。決戦の野戦は息を飲む場面である。敗北し捕えられた6000人の捕虜は、司令官からスパウタカスを指させば生かすと言われるが、次々と自分がそうだと叫んだため、全員死刑となり、連行されながらアッピア街道沿いに全員が十字架にかけられていく。支配者として見せしめのために処刑を決定したローマ軍最高司令官、名優ローレンスオリビエが、冷酷で狡猾な憎たらしい政治家を演じている。権謀術数に明け暮れた当時の元老院政治の描写は興味深い。

元奴隷の反乱軍は、自由を求め結束は強かったが、その末路は、こうして残酷な悲劇に終わる。十字架の林立した地獄絵のアッピア街道を1台の馬車で脱出するスパルタカスの妻と赤ん坊。英雄の気高い生きざまを後世に伝えるべく、十字架上のスパルタカスに別れを告げ、ローマを去っていくラストシーンには胸がしめつけられる。


ローマ帝国の滅亡
1964年、アンソニーマン監督が十字軍時代の大作エルシドに続いて製作した歴史スペクタクル。

国家の崩壊には経済や社会など様々な要因がからみあうが、この映画では、ローマ北方軍団の軍人がいとも簡単に金で買収されたり、元老院が暴君を賞賛する場面など、ドラマとは言え、史実を単純化していると思えるところはやはり物足りない。もう少しシリアスに突っ込んでもよかった。事実は小説より奇なり、という。賢帝マルクス帝の後継者は、グラディエーターと同じく馬鹿な権力者として描かれている。歴史はくりかえされるのだろうか。

若いころの女優ソフィアローレンは実に魅力的でまさに銀幕の華であるため、印象が強く、恋人の将軍役など他の役者の一部がどうしてもかすんでしまうが、多くの名優が頑張っている。
ローマ時代の背景描写は興味深い。ローマの壮大なセットは、今、見ても美しく見事である。


キングオブキングス
ナポレオンの生涯を描いた大作。妻や愛人との私生活のエピソードやタレーランら政治家とのかけひきも見所だ。
当時の戦闘シーンは、映画ワーテルローや戦争と平和に比べて大仕掛けではなく地味である。ロシア遠征の失敗で帝国は崩壊に向かう。
ジャコバンの恐怖政治をどう終結させたか、その政治過程を期待して見たが、当時の社会分析は深くない。

戦争と平和
ヘップバーン、フォンダ主演の映画は有名だ。何といっても役者がいい。他の監督の映画も見たが、やはり、このハリウッドの作風の方が、見やすく感じた。ヨーロッパの映画は、もっとシリアスで、おそらくこの方が原作の雰囲気に近い感じはする。
小学生の頃、大作、戦争と平和の一部の一巻を親に買ってもらった。ペーチャ(ナターシャの弟で戦死する)を中心にしたロストフ家の人間模様のドラマを何十回も読んだ僕にとって、映画の世界の描写は表面的な描写にとどまるが、いつ見ても深い感動におそわれる傑作だ。フランス軍とロシア軍の闘いは壮絶で、その作戦は軍事的におろかに思えてならない。19世紀に突然あらわれたナポレオンの軍事作戦で揺れ動くロシア貴族社会の状況が、ナターシャを中心に見事に描かれる。自分にとっては、ペーチャの出征と戦士が、ひとつのエピソードとして扱われている点が、メロドラマ過ぎて不満が残る。